CAREER DESIGN

実例で知るキャリアデザイン

人事対談

人事部門で活躍する二人の同期。
けれど、その経歴は大きく異なります。
人事としての専門性を一貫して磨き続け、高めてきた人。
人事としての専門性と、事業現場の最前線での経験を掛け合わせ、価値を発揮する人。
それぞれの道のりから、人事というキャリアを知ってください。

PROFILE

竹内 美耶

キリンホールディングス株式会社
人財戦略部 企画・組織開発担当

CAREER PATH

  • 入社1年目:キリンビール株式会社 取手工場 総務広報担当
  • 入社4年目:キリン株式会社(当時) 兼 キリンビバレッジ株式会社 人事総務部 人事担当
  • 入社8年目〜:キリンホールディングス株式会社 人財戦略部

辻 翔馬

キリンホールディングス株式会社
人財戦略部 人財開発担当

CAREER PATH

  • 入社1年目:キリンビール株式会社 名古屋工場 総務広報担当
  • 入社4年目:キリンビール株式会社 中部圏流通支社
  • 入社7年目:キリンビール株式会社 広域流通支社
  • 入社8年目〜:キリンホールディングス株式会社 人財戦略部
CHAPTER 01

働くなら、キラキラした人と。

お二人がKIRINに入社した理由を教えてください。

竹内

「いつまでも成長したい」「社会とつながっていたい」という考えから、結婚や出産というライフイベントを経ても仕事が続けられて、自分にできることをどんどん増やしていけるような会社がいいなと思っていました。それに、人の魅力。学生時代に入ったサークルや部活の経験から、「人で選べば間違いない」という確信があって。漠然とした表現になってしまいますが、KIRINの社員が最もフィーリングが合いました。

私は卒業後、本当は地元に帰って公務員になるつもりでした。営利目的ではなく、人や地域のためになる仕事がしたい。そうずっと思っていたので。並行して就活すべきかどうか迷ったのですが、もしどこかの会社に入るなら、公務員以上に社会に対して影響力が発揮できる会社と決めていました。結果としていくつかの会社から内定をいただき、公務員はセカンドキャリアの可能性として残したまま、KIRINに入社することに決めました。

竹内さんのおっしゃった「人の魅力」。辻さんも感じましたか?

感じましたね。就活中、KIRINの社員は熱心に夢や企業文化を語ってくれました。ところがほかの会社は、給料や福利厚生や、「いかに会社が安定しているか」という話が中心。たまたまだったのかもしれませんが、「話題に出せないくらい、仕事がつまらないのかな?」と思ってしまって(笑)。せっかく民間企業に入るなら、キラキラした人たちが多いところにしようと思いました。

入社する際、人事を志望していたのでしょうか。

竹内

そこまで強くは……(笑)。自分がウイスキー好きだったこともあって、マーケティング部門で飲み方を提案していきたい、という気持ちのほうが当時は大きかったかもしれません。ただ、ゼミで産業心理学や組織心理学を学んでいたので、人や組織づくりにも興味はありました。配属希望先をいくつか挙げたうちのひとつは、人事だったはずです。

私は完全に営業志望でした。当時、飲料メーカーで営業職に就いている知り合いがいたのですが、その方の人間性がものすごく魅力的で。自分もKIRINで営業として鍛えられたら、同じように成長出来るのではないかと思っていました。なので、人事という選択肢は正直あまり考えていなかったですね。

CHAPTER 02

原点は、工場でつくられる。

入社して工場に配属されました。どんな業務を担当するんですか?

竹内

工場全体の人事労務管理と、組織風土変革を担当しました。

私も同じです。人事労務の基礎を学びながら、営業部門との連携、広報、ITに関する窓口、イベントの運営……3年間で、ほんとうに幅広い経験を積みました。

その中でも、特に思い出深い経験を挙げるとしたら?

竹内

私は「47都道府県の一番搾り」でしょうか。各地の工場で、都道府県ごとに中身の違う「一番搾り」をつくるというプロジェクトです。さまざまな制約がある中で、それでも決して妥協せずに品質を追求する製造現場。そして、できあがった「一番搾り」を味わうお客様のうれしそうな姿。そうしたシーンからKIRINの素晴らしさが伝わってきて、すごく感動しました。もともとKIRINに対しては、「品質をとにかく大切にする会社」というイメージがあったのですが、それが決定的になりましたね。

「47都道府県の一番搾り」、僕もよく覚えています。工場では、「全社で決まった戦略や方針を、工場で働く従業員の皆さんにいかにわかりやすく伝え、納得してもらったうえで、工場一丸となりチャレンジしていく」という場面が多かった。それは「47都道府県の一番搾り」を製造・販売する意義を工場の一人ひとりに納得してもらうプロセスも同様でした。「本社が言っているからやりましょう」という姿勢では動いてもらえない。現場の負担が増えかねないチャレンジに、それでも挑むべき意義を自分自身が理解し、膝を突き合わせながら自分の言葉で伝えることが大切さを学びました。先輩から厳しくアドバイスされたのは「本社じゃなくて、自分はどうなのか。『やるべきだ』と思うのか、それとも思わないのか。まず自分の意志と主体性を持て」ということでした。実際、「私はこう思う」という意見を根拠とともに各職場のキーパーソンに示せるようになってから、周囲の反応が大きく変わったという手応えがありました。

先輩のアドバイスが、かなり有効だったわけですね。

特に、工場は一人ひとりの従業員を所属組織だけでなく、工場全体で育成していこうとカルチャーがあるので、直属のリーダーや同じチームの先輩はもちろん、そうではない人たちからアドバイスを受けられる機会も多いです。新人ながら部長以上が集まる経営会議で提言を行い、意見をもらえることもある。そういった「斜めの関係」が充実していたことも、成長環境としてはよかったのかなと思います。

竹内

「新入社員をみんなで育てる」という雰囲気があるんですよね。業務の進め方から社内外の方々とのコミュニケーションまで、社会人としての基礎は工場で身につきました。当時の先輩とはいまでもつながりがあって、ご自宅に遊びに行ったり、悩みを聞いてもらったりしています。

私も工場時代のつながりは根強いですね。末長く相談できる人間関係が新人時代に築けるのも、工場のよさかもしれませんね。

たとえば、どんなことを相談するんですか?

竹内

育児をしながらリーダーを務めている女性の先輩がいるのですが、私自身の状況を重ねつつ、キャリアについての悩みを聞いてもらうことが多いですね。たとえばKIRINには「経営職試験」という大きなステップアップの機会があるのですが、それをどんなタイミングで受けるか、どんな準備をすべきか、とか……。

そういう話、同期同士でもするよね。

竹内

する(笑)。

同期のコミュニケーションも活発なんですね。

竹内

そうですね。拠点が同じ同期の間では、集まって話す機会もけっこうあります。

部署の垣根を超えて本音を打ち明けられる相手といえば、やっぱり同期ですから。

CHAPTER 03

営業から人事へ。

工場を経て、辻さんは念願の営業部門に配属されました。

はい。ずっとやりたかった仕事だったので、モチベーションもすごく上がって。中部圏にある流通企業様を何社か担当し、KIRIN商品のブランド育成に取り組みました。配属されてわずか2か月後に、引き継いだばかりのお得意先を韓国にお連れするというパニック寸前の経験もしましたが(笑)、営業の基礎や対外的なコミュニケーションスキルをたっぷり吸収できた、充実した期間だったと思います。

営業を経験することで、視野や姿勢に変化はありましたか?

工場との違いでいえば、当たり前ですが「ビジネスには競合がいる」ことを痛感させられましたね。また、いい意味でイメージが裏切られたのは「個人商店かと思いきや、チームだった」こと。営業経験を重ねるにつれて、担当する得意先の規模は大きくなり、成果を出すことへのハードルも高くなっていきます。そのために苦しみもしましたが、周囲からのサポートにすごく救われました。なかなか結果につながらなくても決して責めることなく、「どうすれば前へ進めるか」を自分ごとのように考えてくれる。チームのそんなフォロー力をことあるごとに感じましたし、自分もその一員として、まわりを支えられる存在でありたいと自然に思うようになりました。

5年間の営業経験ののち、現職である人財戦略部へ。当然ですが、業務の中身も大きく変わりましたね。

グループ本社の業務なので、まずは「KIRIN全体の経営戦略を理解すること」「各事業会社の組織課題・人財課題を把握すること」が大前提です。そこに思ったより時間がかかってしまって、自信をなくしかけましたね(笑)。また、従業員の皆さんの異動や配置、評価に関わっているので、人や会社に大きな影響を及ぼす一方、決まった正解がない難しさもある。けれど裏を返せば、自分次第で、従業員の皆さんの幸せにも、会社の成長にも貢献することができる。その点には、強い使命感とやりがいを感じていますね。

竹内さんから見て、辻さんの営業経験は人事業務にどう役立つと思いますか?

竹内

営業の現場を通じて、バリューチェーンを熟知しているのはすごくうらやましいです。商品がどうつくられ、どう運ばれ、どう売られているのか。バリューチェーンは、いわば会社の経営そのもの。「営業経験がない私は、もしかしたら会社の半分近くを知らないのかもしれない」。そんなふうに思うこともあるくらい。バリューチェーンの全体像を把握しながら、そこで働くさまざまな社員の立場を理解し、人事に活かす。営業経験があるからこそ発揮できる強みですよね。

とはいえ、責任が大きいだけにやっぱり不安もあります。でも、その不安を同期の前でこぼすと、荒っぽく励まされるんですよ。「人事が不安そうだと、配属される側のこっちも不安になる。しっかりしろ」と(笑)。

竹内

ありがたいよね(笑)。

CHAPTER 04

「向き合う」という普遍。

竹内さんは工場のあと、一貫して人事に携わっています。ご自分で希望したのですか?

竹内

はい。工場で労務管理や新入社員研修に関わるうちに、人事としてのキャリアに興味を持ちました。辻さんのお話にもありましたが、本社の方針を現場に展開していくのが工場での主な仕事。次は方針を立てる側に回ってみたい、という思いもあって。その気持ちを上司に汲んでもらえたこともあり、本社の人事担当になったんです。

本社に配属されて、どのような変化を感じましたか?

竹内

これは人事に限った話ではありませんが、まずは裁量の大きさ。「自分で決める」という場面が多くて、正しく判断するための勉強やリサーチに必死でした(笑)。プレッシャーは相当なものでしたが、だからこそ成長も早まったのかなと、いま振り返って思います。それから、仕事が影響する範囲の広さ。たとえば、私が携わった「なりキリンママ・パパ(※)」という取り組みは、社外でも大きな反響を呼び、メディアにもさかんに取り上げられました。KIRINの人事は会社だけではなく、世の中の働き方さえ変えていけるかもしれない——そんな可能性を感じることができました。
※育児経験のない社員が「ママ」「パパ」になりきって、その働き方を体感する実証実験的な試み

逆に、変わることのない普遍的な事柄はありますか?

竹内

一人ひとりと向き合う姿勢です。ベースにあるのは、工場での実体験。工場の現場は3交替勤務なので、シフトによっては深夜に働く方もいれば、出産などのライフイベントと両立させながら働く方もいる。ごく当たり前に仕事をこなしているように見えても、人それぞれに負荷を感じていることがあったり、公私で何かしらの課題を抱えていたりするのだとリアルに感じました。新しい人事制度やシステムを検討する時に「現場ではどんなふうに受け止められるだろうか」「働き方は本当によくなるだろうか」と具体的にイメージできるようになったのは、あの時の経験があったからだと思います。

竹内さん自身も、出産と育児を経験されていらっしゃいます。ライフイベントと仕事との両立は、就活時に重視していたポイントのひとつですね。

竹内

先輩たちも当たり前のように復帰している会社なので、両立できることに疑いはありませんでした。新型コロナを契機に、環境や制度の整備もますます進みましたし。私もコロナ禍での出産だったのですが、在宅勤務が定着したおかげで、夫婦での協力体制がとてもつくりやすかったです。

辻さんにお聞きしたいのですが、ずっと人事として歩んできた竹内さんの強みはどこだと思いますか?

専門性の高さでは絶対にかなわないですよね。経験が豊かで、知識も多くて。竹内さんと自分を比べると、危機感を覚えます(笑)。

竹内

いや、私にも私なりの危機感があって(笑)。人事の中でも特に労務系の業務では、間違えてはいけないとか、全員に対して平等でなければならないという責任感から、どこか前例主義的になってしまうところがあるんです。一方で営業経験を積んだ辻さんを見ていると、目標とする未来をまず描いてから、バックキャスティングすることに長けている。それがなかなかできないのは、自分の弱みだなと。

そこはバランスですよね。人事も含めてビジネスって、攻めと守りの両方で成り立っていると思うんです。サッカーでいうと、私はどちらかというと自ら点を取りに行くフォワードのような思考がどうしても強くなってしまう。でも、フォワードだけじゃ試合には勝てない。フォワードに的確なパスを供給したり、守りを固める存在も絶対に必要だし、そのバランスが崩れると、組織として一気に機能不全に陥ってしまう。私のように営業経験を持った社員が人事に来て、人事のプロフェッショナルである竹内さんのような社員と協働することも、多様なスタイルを学び・活かし合うという点で大いに意義があると思っています。

CHAPTER 05

人財が育ち、人財で勝つ会社。

最後に、これからの展望をお聞かせください。

KIRINは「ありたい姿」として、「人財が育ち、人財で勝つ会社」を掲げています。その実現に向けて、より多くの従業員が完全燃焼できるような環境をつくっていきたいですね。私自身のキャリアビジョンである「より多くのお客様に笑顔を届け続け、社会貢献する」ことにも通じると思います。人財開発や組織開発の経験を広げ、深めていくことで、専門性をより高めていくことがいまの目標です。

竹内

辻さんの言葉とも重なるのですが、KIRINで働く「人」を通じて、グループの価値がますます発揮されていくよう貢献できればと考えています。人事領域の専門性をさらに高めることはもちろん、データ活用などの新しい経験も積み、磨いたスキルを人事に持ち帰ることにも挑戦したいですね。また、私に不足ぎみの構想力や課題形成力も鍛えていきたいと思います。