「できるかどうか」ではなく、
まず「やってみる」。
対話から生まれる働きやすさが、
入社2年目の挑戦を支えている。

キリンホールディングス株式会社
人財戦略部 企画・組織開発担当 働きがいチーム

村田 勇樹

Yuki Murata
2022年入社 保健科学部卒

Profile

2022年4月に新卒入社し、現部署に配属。研修を経て7月から業務を開始する。以来、コーポレートサイトに掲載されるバリアフリーマップの作成、労働時間管理、グループ従業員エンゲージメント調査事務局など、さまざまな活動やプロジェクトに携わる。重度の視覚障害(強度弱視)をもつ。

※所属・仕事内容は取材当時

「2万人の声を聞き、
キリンへの愛着を数値化する」。
年次にも障害にもとらわれない、
大きな挑戦を。

 私はいま、大きく2つの業務に関わっています。どちらも、キリングループ全体に影響するものです。ひとつは「労働時間の管理」。従業員の時間外労働や有休取得の状況を把握し、必要に応じて法定対応や取得促進を行うほか、労務データの分析と経営層への報告も手がけています。そして「従業員エンゲージメント調査」。キリングループは毎年、約2万人の全従業員を対象として、エンゲージメントスコア——会社に対する愛着や信頼感を数値化したもの——を調査しています。その主担当のひとりとして、先輩社員に支えられながら調査の設計に始まり、回答の集計と分析、経営会議における報告まで、約半年をかけて取り組んでいます。
 特にエンゲージメント調査は、2年目の私にとってはかなり手ごわい業務です。キリンの将来的な取り組みを左右し、非財務指標として公表もされる。そんな調査だからこそ、さまざまな現場と緊密に連携し、従業員のマインドを正確に捉えていくことが必要不可欠。その追求の中で、自分の圧倒的な経験不足を思い知らされることも少なくありません。けれど裏を返せば、それほどまでに大きな成長の機会を得られたということ。障害者であるかどうかに関係なく、若手に任せ、全力で応援してくれるキリンという環境に背中を押されながら、自信や達成感につながる成功体験をひとつひとつ、でも確実に蓄積しているところです。

思い切って発信すれば、
受けとめてもらえる。
違いを力に変えるキリンは、
対話から始まる。

 「村田さんのように、視覚障害を持った内定候補者がいる。キリンで働くイメージが描けなくて迷っているようだから、一度、話してみないか」。採用チームから、こんな相談を受けたことがあります。お会いして私自身の実体験を伝え、質問にもできるかぎり真摯に答えた結果、晴れて内定承諾へ。ほんとうにうれしい出来事でした。まるでかつての自分を見るように、その迷いに共感していましたから。
 キリンに入社する直前は、私も不安でいっぱいでした。障害者採用に力を入れ、サポート体制が整った会社であること。面接では障害の話よりも先に「キリンで何がしたいか」という意志を尋ねてもらえたこと。いくつもの魅力を感じて入社を決めたものの、これほど大きな会社で、果たして戦力になれるのかどうか。新人なら誰もが抱く不安かもしれませんが、それをいっそう強く感じていたのです。
 ひとつだけ決めていたのは「ちゃんと声をあげよう」ということ。サポートを“受ける”。助けて“もらう”。表現はそうでも、姿勢まで受け身になってはいけない。働きにくさがあれば、率直に発信しよう。働きやすさに変えていこう。それが結果的に自分のパフォーマンスを上げ、会社への貢献につながると思ったからです。
 最初は遠慮もありました。けれど少しずつ、私の発信は増えていきました。「熱意・誠意・多様性」という価値観が行きわたり、お互いを尊重する社風が根づいているからでしょうか。キリンは、とても対話がしやすい会社でした。対話から、いくつもの変化が生まれました。その一例が、資料はパワーポイントではなく、音声読み上げソフトと相性がいいワードで作成するようになったこと。これは部署全体の業務効率化にも貢献しました。
 キリンにおける障害者の活躍フィールドは、もっと広げられると思っています。たとえば、アクセシビリティが非常に重要なパッケージ開発に、障害者が参加した例はありません。いまは人事としての専門性を鍛え、「違いを力に変える組織風土」の実現に力をそそごうと思っていますが、いずれはさらに幅広い分野にも手を伸ばしたい。そのための対話が、何の不安もなくできるのがキリンという会社ですから。

学生生活
振り返って

学内外でのプロジェクトを通じて、
社会に貢献する「発信」の姿勢を学ぶ。

 学生時代は、障害者の情報保障に関する研究や学外プロジェクトに参加しました。中でも印象に残っているのは、視聴覚の両方に障害を持つ方に向けたコミュニケーションアプリの開発と、大規模スポーツイベントにおける公式WEBサイトのアクセシビリティ検証。いずれも、社会に貢献する手応えをつかめた貴重な経験でした。障害者が社会との接点を増やしながら、ニーズはもちろん、自分自身のスキルや感覚を積極的に発信していくこと。それが、社会全体のダイバーシティ&インクルージョンを推進するうえで非常に重要なのだと学ぶこともできました。