まだないものは、
キリンがつくれ。
おいしさと品質を、
独自技術で包み込む。

キリンホールディングス株式会社
パッケージイノベーション研究所

本村 考平

Kohei Motomura
2015年入社 工学府 物質プロセス工学修了

Profile

「大きなことを成し遂げるには、協力する相手が重要」と考え、社員の人柄を見てキリンへ。北海道 千歳工場での研修を経て、2015年8月よりパッケージング技術研究所(現:パッケージイノベーション研究所)へ配属。缶・壜・PET、営業什器などのアセスメントを担当。2016年10月からバリア技術の開発を行う。

※所属・仕事内容は取材当時

気体をシャットアウトし、
賞味期限を数週間から半年へ。
分野を超えた技術応用によって、
キリンの品質を支えていく。

 飲みものは、当然ですが「液体」です。ビンや缶、ペットボトルといった容器がなければ、お客様のもとに届けることはできません。それらの容器を進化させていくことが、パッケージイノベーション研究所のミッションです。たとえば、2017年に登場したばかりの「Tap Marché(タップ・マルシェ)」。クラフトビール提供用のサーバーですが、ビールの容器はペットボトル。ペットボトルは取扱いに優れますが、酸素や二酸化炭素、水蒸気を通しやすく、数週間しかビールの品質を保てません。それを半年にまで延ばしたのが、私のチームが手がけたバリア技術です。容器の内側にDLC(ダイヤモンドライクカーボン)によるコーティングを施し、気体をシャットアウトするのです。もともとDLCコーティングは、半導体などで用いられていた技術。世界で初めて、キリンがペットボトルへの応用に成功しました。分野の垣根を超えてアンテナを張り巡らせ、世の中にないものは自分たちでつくってしまう。そんな姿勢が一貫しているからこそ、手応えの大きな研究開発ができるのです。

キャンペーン告知後に発覚した
景品の不具合。
お客様を裏切らないため、
過酷なスケジュールに挑む。

 2015年の秋、とある販売促進キャンペーンが立ち上がりました。商品を購入してシールを集めると、景品として専用サーバーがもらえるというもの。私のもとに、そのサーバーの品質評価をしてもらえないかという依頼が舞い込んだのです。現物を動かしてみて驚きました。液が勝手に垂れてきたり、逆に注ぎ口から出なかったり、キャップが飛んだり。トラブルだらけで、お客様に差し上げられる品質にはまったく届いていません。すでにキャンペーンは大々的に告知されており、景品の発送も年明けに迫っていました。「延期すべきでは」「いや、いっそ中止したほうが」。そんな声も飛び交いましたが、結論は「予定通り進める」。サーバーは、もっとも人気の高い景品のひとつ。楽しみにしてくださっているお客様を、がっかりさせるわけにはいかないというのがキリンの結論でした。そこから、私の奮闘は始まりました。サーバーを分解してトラブルの原因をひとつひとつ突き止め、改善策と合わせてサーバーのメーカーにフィードバック。改良されたものをまたテストし、問題があればまたフィードバックし……。冷や汗の絶えない数ヶ月でしたが、どうにか完璧なサーバーを送り出すことに成功したのです。お客様の期待を裏切らずに済み、ホッと胸をなでおろすとともに、一丸となって応えてくれた社内外の方々にも感謝しました。品質に強いこだわりを持つキリンは、自分に課すハードルが高いことはもちろん、社外のパートナーに対する要望もついハイレベルになりがちです。それでも、惜しまずに全力を注いでくださる多くのパートナーに支えられています。「本当にいいものをつくりたい」。そんなキリンの想いへの共鳴が、広がっていることの証拠ではないでしょうか。

学生生活
振り返って

世の中にもたらす影響を、
先回りして考える。
それが挑戦を楽しくする。

 サークルでは、マンドリンオーケストラ。勉強では、再生医療の研究。さらに生協の運営や新入生向け学生雑誌の編集長など、さまざまなことに没頭しました。それぞれに発見があったのですが、共通した姿勢といえば「これがうまくいったら人はどう喜ぶか」「世の中はどう変わるか」と、常に結果を俯瞰していたことでしょうか。この姿勢は、キリンに入社してからも変わりません。これまでにない挑戦には、いくつもの壁が立ちはだかります。目の前だけを見ているとくじけそうになりますが、世の中へ与える影響を先回りして思い浮かべることで、また意欲が湧いてくる。先を考えることは、仕事を楽しくするコツだと思います。