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『晴れ風』の大ヒットを支えた 若手社員の挑戦
ビールとしての飲みごたえと飲みやすさを両立させた、17年ぶりの新スタンダードビール『キリンビール
晴れ風』。2024年4月の発売から約3か月で、年間販売目標の7割となる300万ケースを突破するなど、大きな反響を呼んでいます。
そんな『晴れ風』の開発の裏側には、20代から30代の若手社員の活躍がありました。『晴れ風』の開発に携わった若手社員にフォーカスし、それぞれの挑戦の様子をダイジェストで紹介します。

若手社員の挑戦01 入社8年目で『晴れ風』のマーケティング担当に。
若手社員の挑戦01 入社8年目で『晴れ風』の マーケティング担当に。
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向井 優夏
キリンビール株式会社
マーケティング部 ビール類カテゴリー戦略担当
2016年入社。九州エリアでの量販営業を経て、営業企画にて量販営業のサポートに従事。2022年、社内公募をきっかけに事業創造部へ異動し、『SPRING VALLEY(スプリングバレー)』のブランド担当に就任。2024年マーケティング部へ異動。『キリンビール 晴れ風』の商品開発・ブランド育成に携わる。
2016年入社。九州エリアでの量販営業を経て、営業企画にて量販営業のサポートに従事。2022年、社内公募をきっかけに事業創造部へ異動し、『SPRING VALLEY(スプリングバレー)』のブランド担当に就任。2024年マーケティング部へ異動。『キリンビール 晴れ風』の商品開発・ブランド育成に携わる。
※所属は取材当時のものであり、現在の組織名と異なる場合があります。

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ー向井さんは『晴れ風』のマーケティング担当として、どのようなお仕事をされていますか?
向井:マーケティング部では、中味やパッケージの開発からプロモーションまで、商品に関連するすべてのことに携わります。私が『晴れ風』のプロジェクトに参加したのは、商品が発売される3か月前でした。
その時点で味は決まっていたので、私は主に発売前のプロモーション戦略の策定と実行を担当しました。発売後の現在は、メディアへのPRや広告・販促ツールの制作などを行っています。 -
ー『晴れ風』のコンセプトについて教えてください。
向井:ビールとしての飲みごたえと飲みやすさを両立させたビールで、ビール好きのお客さまはもちろん、ビールが苦手な方にも楽しんでいただけるような味わいや世界観をコンセプトにしています。
その背景には、普段からビールを飲むお客さまに加えて、「ビールを楽しめていない」「少し苦手だな」「好んでビールは飲まない」というお客さまにも手に取っていただきたいという思いがあります。
特に最近は、「ビールは飲まない」という若者は少なくありません。あとは、昔はビールをよく飲んでいたけど、最近は重く感じてあまり飲まなくなったという40〜50代の方も多くいらっしゃって。
そういった方も含めて、幅広いお客さまに『晴れ風』を楽しんでいただき、今後『一番搾り』に次ぐ第2の柱となるブランドに育てていきたいです。 -
ー開発において、チームでこだわったところはありますか?
向井:基本的なことですが、企画段階の紙やデータで見るものが、お客さまの生活のなかでベストなアウトプットになっているのかを大事にしながら、一つひとつ進めました。
例えば、缶に記載されている「晴れ風 ACTION」のQRコードが、すべての携帯端末とアプリでちゃんと読み込めるかを製缶メーカーの各工場に足を運んで実際に確認したり、缶の色や販促ツールの色を何度も校正したり。
交通広告を出す場所を確認しに行って、「見えにくいな」と思ったら変更するなど、実際に足を運んでお客さま目線で確認することにもこだわりました。
KIRINの従業員はモノづくりに対して誠実な方が多く、最後の最後まで「いいものにしたい」とチーム全員でギリギリまで粘りました。ほかの部署の方も同じ熱量で協力してくださったので、全員がブランドチームの一員のように感じましたね。 -
ー今回、ブランドの立ち上げを通して感じたことはありますか?
向井:やっぱり、自分が経験したことのないことをするのって、一番成長できるなと実感しました。経験がないからこそ、一つひとつのことに対してすごく考えますし、自分自身の成長や達成感も大きいです。
あと、マーケティングの仕事は、調査やSNSはもちろん、実際に飲んでいる方をみかけたり、友達から「『晴れ風』めっちゃ好きで、家族で飲んでる!」とうれしい声をもらえたり、実生活のなかでお客さまの反応をダイレクトに知れる点にやりがいを感じますね。これは、身近な商品を扱っているメーカーならではの醍醐味なんじゃないかなと思います。
若手社員の挑戦02 製造部門の若手が振り返る『晴れ風』の味づくり
若手社員の挑戦02 製造部門の若手が振り返る 『晴れ風』の味づくり
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東橋 鴻介
キリンビール株式会社
マーケティング部 商品開発研究所 中味開発グループ
2018年に入社後、岡山工場での醸造担当を経て、2020年に商品開発へ。『SPRING VALLEY 豊潤〈496〉』、『のどごし〈生〉』、『グリーンズフリー』などを担当。2024年、17年ぶりとなるスタンダードビールの新ブランド『晴れ風』の開発に携わる。
2018年に入社後、岡山工場での醸造担当を経て、2020年に商品開発へ。『SPRING VALLEY 豊潤〈496〉』、『のどごし〈生〉』、『グリーンズフリー』などを担当。2024年、17年ぶりとなるスタンダードビールの新ブランド『晴れ風』の開発に携わる。
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亀岡 峻作
キリンビール株式会社
仙台工場 醸造エネルギー担当
2022年に入社後、現在まで仙台工場で醸造を担当。『一番搾り とれたてホップ生ビール』や『一番搾り 超芳醇』などの味づくりで経験を積んだのち、『晴れ風』の醸造に携わる。
2022年に入社後、現在まで仙台工場で醸造を担当。『一番搾り とれたてホップ生ビール』や『一番搾り 超芳醇』などの味づくりで経験を積んだのち、『晴れ風』の醸造に携わる。
※所属は取材当時のものであり、現在の組織名と異なる場合があります。

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ー『晴れ風』で目指した味づくりについて、教えてください。
東橋:新しいスタンダードビールを目指すときに、「『一番搾り』のようにしっかりとした深い味わいのビールは多いけど、爽快に飲めるさらっとしたビールは少ないんじゃないか?」という考えがスタートとしてありました。
それから味づくりを進めるなかで、「ビールらしい飲みごたえ」と「癖のない飲みやすさ」を両立させることを目指し、『晴れ風』のコンセプトにたどり着きました。『一番搾り』のように製法がブランド名になっているものとは違って、『晴れ風』はすごく情緒的な名前。その分、味づくりの自由度は高かったですね。亀岡:ビールのきれいな味、爽やかなおいしさを追求して、シンプルに勝負するという方針は比較的早い段階で決まっていましたよね。醸造現場でも、試作品を中味開発グループの皆さんに飲んでもらい、アドバイスを受けながら味を磨き上げていきました。
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ー味のバランスが決まるまで、さまざまな試行錯誤があったのでしょうか。
東橋:順風満帆ではなかったですね。これまでにない“新しさ”を表現するのが思った以上に難しかったです。最初の試作品は「過去にあったような味だ」と言われたり、「まだ求めているレベルになっていない」というのが試飲会の雰囲気からも伝わってきたりして(笑)。
そのあと一から考え直し、過去のやり方を踏襲せずにこれまで試みなかった発想や思い切ったアイデアにも挑戦してみようとチームで話し合ったんです。
ただ、単純に香りや味を足して個性を出すと飲みにくさにつながることもあるので、それは避けたかった。最近のビールのトレンドではないかもしれないけれど、あえて引き算のような発想で『晴れ風』に必要な要素のみを残して、きれいな味にすることで逆に特徴を出していきました。亀岡:初めて見たとき、『晴れ風』はシンプルでストレートな、直球勝負のかっこいいレシピだと感じました。KIRINがこれまで挑戦してこなかった部分に一歩踏み出すようなチャレンジだったので、それを現場の技術で実現したいと強く思ったのを覚えています。
実際に完成した『晴れ風』を飲んだときは、大げさじゃなく「こんなにおいしいものができたんだ」と震えました。「これは売れるんじゃないか」とも(笑)。これまでの仕事で一番うれしい瞬間だったと思います。東橋:お客さまから「新しさを感じる」という感想をもらえたのはうれしかったです。シンプルできれいな味にしている分、ごまかしがきかないレシピなので、各工場としっかりコミュニケーションを取らないといけない。ネガティブなフレーバーが出ないよう、さまざまな調整を行いました。
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ー商品の「中味」をつくる仕事の醍醐味について教えてください。
亀岡:やっぱり、お客さまの反応と自分自身の満足度が大きいことですかね。品質や味に一切妥協せずにつくり込んでいるからこそ、自分で飲んでいても「『晴れ風』って本当においしいな」とあらためて思えるんです。個人的な話ですが、『晴れ風』が発売された翌週に結婚式を挙げて。そのとき友人からの第一声が、「『晴れ風』おいしかったよ」という言葉だったんです(笑)。そうやって身近な人たちにも声をかけてもらえたのは、とてもうれしかったですね。
東橋:ダイレクトに評価が返ってくるというのは、味づくりの醍醐味ですよね。KIRINに入社した理由でもある「お酒で人と人をつなげたい」という思いが、『晴れ風』をとおしてより実感できていて、日々やりがいを感じています。スーパーで箱買いしてくださる方や、SNSでのコメントを見ると素直にうれしいですし、さらにおいしいものをつくろうと励みになります。
『晴れ風』は「ビールが苦手だけどこれなら飲める」という意見が多く、目指していたことが届いているなという手応えも感じています。シンプルな味わいを活かして、ビアカクテルのベースにしてくださる方もいて新鮮でしたね。肩肘張らずに気軽に楽しめるビールなので、さまざまなシーンで自由に楽しんでもらえたらうれしいです。
若手社員の挑戦03 大ヒットを支え続けた「営業」と「SCM」の仕事
若手社員の挑戦03 大ヒットを支え続けた「営業」 と「SCM」の仕事
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武井 詠子
キリンビール株式会社
生産本部 SCM部 需給担当
2018年に入社後、キリンビール名古屋工場のパッケージング担当を経て、2021年より本社の需給担当に。製造から配送、容器の回収に至るまでのサプライチェーン全体を見渡し、最適な生産・物流体制を構築するSCM(サプライチェーンマネジメント)として、主に『晴れ風』をはじめとする国内ビール商品を担当している。
2018年に入社後、キリンビール名古屋工場のパッケージング担当を経て、2021年より本社の需給担当に。製造から配送、容器の回収に至るまでのサプライチェーン全体を見渡し、最適な生産・物流体制を構築するSCM(サプライチェーンマネジメント)として、主に『晴れ風』をはじめとする国内ビール商品を担当している。
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本地川 隼
キリンビール株式会社
近畿圏流通第1支社流通第1支店 量販営業担当
大学時代にキリンのビアレストラン「キリンシティ」で4年間アルバイトを経験。2019年に入社後は、キリンビールの営業として全国160店舗以上の量販店を担当している。
大学時代にキリンのビアレストラン「キリンシティ」で4年間アルバイトを経験。2019年に入社後は、キリンビールの営業として全国160店舗以上の量販店を担当している。
※所属は取材当時のものであり、現在の組織名と異なる場合があります。

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ー『晴れ風』では、どのような業務を担当していましたか?
武井:まずは『晴れ風』を安定して販売し続けるために、どんな準備が必要かをいくつもシミュレーションしました。具体的には、お酒や資材、製造体制、物流などの要素を考え、どれくらい出荷すれば市場の反応に対応できるかを分析しましたね。ただ、17年ぶりの新ブランドということもあって、過去のデータがあまり参考にならず(笑)。ゼロからの挑戦として取り組みました。
最も大事だったのは欠品を防ぎ、確実に『晴れ風』をお客さまに届けること。見えないリスクをどれだけ把握できるかという不安もあったのですが、需給担当として4年目の挑戦だったので、これまでの3年間で培ったものを全部発揮したいという気持ちでした。本地川:私は、営業担当として、『晴れ風』をフックに、お得意先さまでビールの売上をどのようにつくっていくのか、お取り扱いいただく内容や訴求方法はどうするのかについて、バイヤーと話し合っています。店舗によって売り場の規模や取り扱う商品が違うので、できるだけ多くの店舗に『晴れ風』を置いていただき、一人でも多くのお客さまに『晴れ風』を楽しんでいただけるよう営業活動をしていますね。
『晴れ風』のような新ブランドや限定商品が出るとき、私たち営業担当が販売数の予測を立て、その予測に基づいてSCM部に需給管理を行ってもらっています。そのため、SCM部とは密に連携しています。 -
ー『晴れ風』が発売直後には、好調により出荷を調整した期間があったそうですね。SCM部ではどのように対応したのでしょうか?
武井:不足しているのはお酒なのか、資材なのか、それとも製造体制に余裕がないのかといった点を、全国の工場ごとに調整しながら対応しました。『晴れ風』の勢いに対して、今何が足りなくて、これから何が足りなくなるかというのを早めに判断して、各部署やサプライヤーさんと協力して乗り越えていったという感じです。チームプレイとコミュニケーションがとにかく大切でした。
SCMの仕事では「先を読む」ことがとても大切なんです。そのために「今」の状況を整えながら、常にさまざまな出来事へのアンテナを張っておかなければいけない。もちろん正解がないので間違うこともありますが、過去や未来を含めた広い視野で取り組むことができるのが、この仕事の醍醐味だと思います。 -
ー営業の現場では『晴れ風』をどのように売り込んでいったのでしょうか?
本地川:KIRINが17年ぶりに新しいスタンダードビールブランドを出すということで、自分としても「これは絶対に成功させなければ」という気持ちがありました。『晴れ風』の魅力をどう伝えるかは、お得意先さまが抱えている課題によって異なるので、そのニーズを見極めることを大切にしています。
『晴れ風』においては、味や製法、そして原料へのこだわりをわかりやすく伝えるようにしました。ほかの商品との違いがわかりにくい場合もあるので、味の特長をしっかり知っていただくことを意識していました。実際に私も『晴れ風』を飲んでみることで定番商品の特長までより見えやすくなって、その発見が商談でも役立ちましたね。
商談の場では、ターコイズブルーの布で部屋を覆って「晴れ風部屋」をつくったり、味の違いを感じてもらうために、ほかのビールと飲み比べできるようにしたり。キリンが『晴れ風』にどれだけの思いを込めているかを、相手にわかりやすく伝えることも大切にしていました。小さな仕掛けや工夫を欠かさず、できることはすべてやろうとチームで話し合っていましたね。 -
ー発売後、供給が追いつかなくなりそうな状況に、営業の現場ではどう対応していましたか?
本地川:反響の大きさに驚きつつ、営業としては今ある在庫をうまく分配して、偏らせないようにコントロールすることを最優先に考えました。「供給が追いつかないかも」という最初の報告が入ったときは、お得意先さまやお客さまへのご迷惑を最小限にするためにすぐに動きましたね。バイヤーに連絡をして駅前のロータリーで急遽商談をするなど、とにかく迅速に行動することに注力していました。
店舗を回っているときには、「ふだんビールを飲まないけどこれなら飲めそうだ」とか「よく売れているし、もっと売りたい」と、従業員さんからポジティブな声をかけていただくことが多く、営業として素直にうれしかったです。